BACK B&B 1日目 テレホンカード・全文NEXT ダブリンのタクシー    

 硬貨ではだめだテレホンカ−ドを買うことにした。この街にもコンビニはある、公園前の小さい店に行った。開いたままのドアーから中に入った。奥に一人の男がレジの置かれたデスクの椅子に座っている。雑誌、新聞、飲み物など売られている。「テレホンカードがほしいんです」と言うと、ずんぐりで、「男優のデイビット・ニ−ベン」に似た男が椅子からゆっくりと腰を上げた。10ユニットが2ポンド、20ユニットが3.5ポンド、50ユニットは8ポンド、100ユニットは16ポンドとなっている。ユニットの大きさに比例して割引を多くしている。カ−ドのサイズは日本と同じだが、厚さは2倍程ある金バリのICカ−ドである。とても綺麗なカードなので4種類を一枚づつ買った。10ユニットにはセサミスト−リ−のキャラクター風の絵が書かれている。20ユニットにはスリムな後ろ向きの裸体の人間が、白鳥とともに描かれている。公園北側の電話ボックスを使う事にした。「職員」が、料金ボックスからお金を集めているところであった。彼は「直ぐ済みますから」と言いながら、次のボックスに移動して行った。

 100ユニットのカ−ドを入れて、旅行会社のYに電話をした。「すいませんでした。この電話番号は最近変わったそうです。タイ領事館で確認しました。新しい番号をお伝えします」と、あいも変わらず「落ち着いた」口調である。「電話番号は聞いておくがとても困惑している。「君との電話料金も3000円ほど掛かっている。君の責任でタイ航空に連絡すべきだと思う」と言ってやると、「分かりました。そうさせて頂きます」と力のない言葉が返ってきた。そして、自宅には「無事」の連絡をしておいた。「やれやれ」と思いながら帰途についた。朝9時半過ぎ、アイルランド第三の都市ゴ−ルウエイ、その中心であるこの公園周辺は今日も人も車もただ静かに流れている。天気は回復して初秋の朝日を浴びている。気に掛けていた「難関」が「解決」すると、今朝の「ハプニング」の事が気になり始めた。タクシ−に乗り10時近くにB&B戻った。入り口のドア−も開いていた。先ず部屋に戻ると廊下の置き手紙はなかった。オ−ナ−は、僕が外出した理由は知っているだろう。それより、「あの老夫婦」のことを何と説明すればよいのか困った。

 釈明の言葉を用意しながら、奥の食事室に入っていった。彼女はそこにはおらず隣の台所に居た。彼女は僕の気配に気付いていて、直ぐにこちらを振り向いた。やはり険しい顔をしている。用意していた「謝り」の言葉で、一気に弁解をしてしまった。多少落ち着いた彼女は、「あなたがノックした部屋の老夫婦は旅行客で驚いた」と言っていました。「でも、あなたの手紙で理由が分かっていたので、きちんと説明はしておきました」と言った。彼らはすでに出発していた。朝食を終え料金を支払った。そして、彼女にお詫びを言ってからB&Bを出た。「ゆっくり」と歩いて街まで出ることにした。下の港には、古いボ−トが昨日同様3隻係留されたままである。港といっても、長さ50mほどの一本の突堤が沖にのびているだけだ。周辺にも人影はない。沖に向かって広い海がどこまでも続いている。その遥か沖合いには、アンナが話していたアラン島が浮かんでいるのだろうか。